〜第一章 出会い、そして……〜
埼玉県、川越の街。
人にぎやかなこの川越で幕が開く。
夜だというのに、ネオンや街灯の明かりが眩しく、人々も帰宅しようとしなかった。
そんな人々の雑踏の中、ぽつんとしゃがみながら話をしている青年が二人いた。
今風の……ではなく、真面目そうな二人である。
一人は疲れた表情をして、今日一日遊び疲れたように感じる。
そしてもう一人は未だに表情は明るく、まだまだ遊べるように感じた。
そんな二人が今回の主役達であり、喜劇悲劇のきっかけとなる人である。
俺の名前は黒柳康夫。今年で二十一歳になる社会人だ。
今日は久しぶりに高校の頃の同級生と遊ぶことになり、ここ川越に集まったわけだ。
カラオケ行ったり、ゲーセン行ったり、飲み歩いた。
そして日も暮れ、今現在ここに残っているのは、俺と親友の松岡秀明だ。
松岡は癖毛のある栗毛がポイントの二十歳。
ルックスはそこそこで、服のセンスも結構流行的であり、俺は少し尊敬してしまう。
性格もやさしく、こんな俺の些細な悩みも親身になって聞いてくれる。
そんな奴である(今、俺の数少ない親友)。
「ははは、そうだな。ああ、そうそう」
俺はたわいのない話で松岡と盛り上がっていた。
そんなとき、松岡が話題を切り出す。
「でもさ、最近おもしろい話がないよね。あまり良いニュースないし」
「そうかぁ?……いろいろあるんじゃないの、いろいろと。う〜ん」
俺は頭を掻きながら思考モードに突入した。
しかし考えること事態、性に合わない俺なので……結局。
「あ〜あ……。なにもかも忘れて合コンやりてえな、女並べてよ」
「幹事がいないんだ」
「そうかぁ。じゃあ、しゃーないな(しょうがないな)」
二人の目が合い、同時に苦笑いしてしまう。
「あ、でもよかったよね。仲直りできて……」
「ああ。一時は大変だったもんな」
「ははは、女を取り合ったりね……」
「好敵手だった」
ははははは…………。
ネオン街の川越に、青年達の笑い声が響きわたった。
時は遡って今から数年前、俺がまだ高校生の頃……。
ピンポーン…
「あ、はい。いつもご苦労様…。ヤックン、彩乃ちゃんが来たわよ!」
「う゛あぁい。ん? いつもより2分早いじゃんかよ…」
俺は布団の中から時計を見て、今の時間がどのくらいか確認した。
、いいんですか? おじゃまします…
いいのよ、いつもいつもごめんね…手間かけちゃって……
いえ……そんな……
なにか会話が聞こえてきた。
母親と彩乃の声だ。
ああ、朝か。起きなくちゃな…。う〜ん、うぉ?
目の前が真っ暗になってしまった。しかも生暖かく、ボディソープのいい香りがする。
「だ〜れだ? はやく、ヤックンあててよ!」
くもった声が聞こえた。彩乃のいつもの手、目隠しだ。
「彩乃。もう止めろよこういうの、…俺達は高校生なんだぜ?」
やっと視界が回復した。
「んふ、こうしないと起きないくせに」
「うるさいな、これから着替えるんだから……あっちいってろよ」
俺はシーツで体を隠しながら、シッシッと彩乃を追い払うジェスチャーをした。
「なになに、なんでそんなことされなきゃなんないの。昔はもっとオープンだったのに」
「いいから。早くあっちいけって言ってるだろ」
「あ! はは〜ん、それであたしを追い出そうとしたのか」
彩乃は俺の下半身をのぞき見している。
「そっか、あたしで感じちゃったんだ」
「違う! これは朝立ちといって男の生理現象で……なに言わせるんだよ、早くいけって」
「別に良いじゃん、ここにいたって……。それとも恥ずかしい?」
「恥ずかしい理由(わけ)ないだろ」
「じゃ、決定。早く着替えて」
「ったく、しょうがないなぁ」
彩乃はニコニコ顔でこちらを見ている。彩乃こそ恥ずかしくないのだろうか、男の着替えるところを見ていて……ふとそう思った。
この目の前にいるコギャルが織田彩乃。俺の幼なじみだ。
彩乃は今風のコギャルではなく、ごく普通の感じである。
髪はセミロングで、ストレート。さらさらな黒髪がいっそう際だつ。
童顔な顔立ちで、すらっとしている一重瞼は軽いアイシャドウが塗られている。
化粧は校則で禁止されているが、このくらい教師達は目をつぶってくれているらしい。
コケティッシュという言葉が似合う、現役の高校生である。
その彩乃との出会いは俺がここの街に引っ越してきた6才の頃。
俺は引っ越しという急激な環境の変化についていけず、近くの公園で一人泣いた。
少し錆び付いたブランコに座り、大粒の涙をぽろぽろと流していた。そんなとき、
「ないちゃだめだよ。なくとね、いいことがないってママがいってた」
一人の少女が俺の前にたっていた。見た目からいって同い年くらいだろう。
「はいこれ。もうないちゃだめだよ」
ハンカチを俺に差しだし、ちゃっかりと隣のブランコに座っている。
真っ赤な夕日が公園に射し込み、俺の視界がオレンジ色に染まった。
「きょう、ぼく、ひっこしてきたんだ。ずっととおくのほうから……」
俺は嗚咽のため、それしかいうことができなかった。
「じゃ、おともだちになろう。あたしがいちばんさいしょのおともだちね」
「うん」
その後、夜暗くなるまで二人で遊んだ。
「じゃ、ばいばい」
「あ、えっと……うんうん、なんでもない」
「?、じゃあね」
薄暗い町中に少女は消えていった。
俺は名前を訊こうと思ったが、訊けずじまいに終わってしまった。
ああ、なまえもきけなかったな。いいか、いえにかえろう。
門灯が明るく灯っている玄関前まで来たときに俺は気付いた。
ポケットから鍵をとろうとしたとき、さっき貸してもらったハンカチの感触がした。
そうか、返し忘れちゃったんだとポケットから取り出し、広げたとき、隅の方にさりげなく書かれていた。
『おだ あやの』
俺は丁寧にたたんで、またポケットにしまう。
俺の幼い頃の思い出の一つだ。
そして、その少女は隣の家の子だとわかり、親子共々なかよくなり、現在に至っている。
とくに自分の親は気が早く、俺と彩乃はベストカップルだから良い夫婦になるとか、結婚式はあそこの教会が良いとか、いつも舞い上がっている。
しかも彩乃も否定せず、まんざらでもない感じなのだ。
そういうところが俺は嫌なんだ。
親と彩乃がグルになって俺をいじめている感じがする。こっちの味方が誰もいない…。
ま、なにはともあれ、俺もそのうち彼女を見つけて彩乃を見返してやるからな。
「ねぇ、着替えた? 早くしないと本当に遅刻になっちゃうよ…」
「いいよ別に。俺はのんびり行くから、彩乃さきいけよ」
俺は衣装ケースの中からネクタイをとり、彩乃にそういった。
「ダーメ! もうこっちが恥ずかしいよ、遅刻夫婦なんて言われちゃうし」
「別に良いよ。彩乃は彩乃、俺は俺。遅効は俺だけで良いから」
「なんで?」
「だから俺のために彩乃は遅刻しなくていいって言っているんだよ。だいたい、俺みたいのとずっと居ると、一生を棒に振ることになるぜ」
「……ねぇ、なんでそんなこというの?」
彩乃の声は小さかったが、口調はとても強かった。
「…なんでって。そりゃあ一日中監視される身にもなってみろよ。息苦しくて、自由がないじゃないか」
「だって、…あたしは、ヤックンのためと思って………だから」
「俺のため? ……それが迷惑だって言ってるんだ」
俺も寝ぼけているのか、口が滑ってしまった。
「バカ!」
俺を怒鳴りつけ、彩乃は部屋を飛び出した。
俺の部屋に、かすかに彩乃の香りがただよっている。
「彩乃が悪いんだよ。あんなこというから」
口喧嘩の原因をむりやり彩乃に責任転嫁していた。
あ〜あ……。朝から刺激的だったな、完璧に目が覚めた。
今から行っても一限目に間に合いそうもないし。とりあえずどっかで暇つぶしてくか。
鞄を手に取ったとき、彩乃が居た床に視線が止まった。
あれってもしかして……。
彩乃がいつも作ってくれている俺の弁当と、昨日の俺がサボった授業のノートがメモ書きと一緒に置かれていた。
『ヤックンは単位が危ないんだから、その分これを見て勉強してね☆ あやの』
ノートの中を見ると、授業内容がこと細かく書かれており、マーカーや赤ペンで重要事項がまとめられていた。
確かにこのノートのおかげで、俺は留年しないで済んでいるんだよな……。
ふと、そんなことを考えながら床を見ていると一粒のシミを発見した。それは彩乃の残した『涙の跡』。
「行こう、もうこんな時間だ……」
俺は心の中で何か引っかかったが、無視するように部屋から出た。
キンコーン、カンコーン…
2限目、授業始まりのチャイムが鳴る。
彩乃は斜め前の空席である黒柳康夫の席を眺めながら、心でつぶやく。
バカ……。
教卓のところで教師はなにかを言っていたが、彩乃の耳には届いていなかった。
周りの生徒も彩乃には無関心なのか、無言でノートを取っている。
頭の中には、朝の黒柳の台詞が浮かんでいた。
『……それが迷惑だって言ってるんだ』
そう。ヤックンは迷惑だったんだよね。あたしが朝から家に押し掛けて。
バカみたい、一人で張り切って、恋人気分に浸ってたんだ。
ヤックンのこと考えもしないで……。
「つぎ、織田。おまえはこれ訳してみろ」
『我和道・他的哥哥是医生』
「は、はい。えっとぉ……わかりません」
「こんな簡単なものもわからないのか。今日の織田は………」
我は英語の"I"、そう"私は"で…和道は知っていると訳す。
私は知っていると訳すんだ。それで、なにを知っているかというと………
授業は彩乃をおいて、どんどんと先へ進んでいく。
「ねぇ」
母親が深刻な顔をして、家を出ようとした俺を呼び止めた。
俺が振り向いた瞬間、キッチンの方から母親は飛んで出てきた。
「どうしたの。彩乃ちゃん泣いてたよ。ヤックン、まさか……」
「なんだなんだ。あんたも彩乃の味方かよ。もううんざりだぜ、こんな家。いつ帰ってきても俺の敵しか居ねえし。ああ、イヤだイヤだ。そうやって俺のこと睨むことしかしないし〜」
「バカ!」
母親にも彩乃と同じ事を言われ、心がチクリと痛んだ。
「…………」
「彩乃ちゃんは女の子なのよ。あんたの男友達や弟じゃないの、いい? 女の子なんだよ……女の子っていうのは……」
母親も涙をためて俺に何かを言おうとしている。が、咳き込んで言葉が出ない。
「はいはい。…それじゃ、いってきます」
俺はただならぬ母親の気配を察して、そそくさと玄関に向かった。
そして俺が家を出たのは太陽の光が眩しくなる2限目の授業が始まる頃だった。
ったく、あそこまで言わなくてもわかってるよ、彩乃を泣かせたことぐらい。
でも大丈夫だって。あいつはそんなに柔(やわ)じゃないことぐらい知ってる。
学校に行けばわかる。またにこやかに会話が弾むってもんよ……。
そう俺はこのとき、事の重大さにまだ気付いていなかった。
泣かせたことがこんなにも深く傷つくものだとは…。
いつも通り、俺は学校付近のコンビニに入っていった。
なぜか普段より足取りは軽い。
そうか、今日は彩乃がいないからな。おきらくごくらくって奴だ(古いなぁ)。
「いらっしゃいませ」
女子大生くらいのアルバイトが俺に向かってスマイルする。
顔馴染みな仲なので、二人ともにこにこだ。
「また寝坊?」
「うん、そんなとこかな」
「あれ? いつも付き添いの彼女は?」
「………」
自分の顔は鏡をとおさないと見えないが、それでもわかるぐらい表情が暗くなる。
「喧嘩した。ね? 図星でしょ?」
「………」
なんでこうも女性というのは鋭いのだろう。俺は逆に怖くなってきた。
特に他人の女の話となると、ますます鋭くなる。
ふぅ、とりあえず時間まで雑誌コーナーだな。
イヤなことは忘れようと、鬱憤(うっぷん)晴らしにエロ本を立ち読みした。
若い二十代前半の女性が下着姿、あるいはヘアをだして挑発ポーズをとっている。
夜に見ていたらすぐにでもおかずになるくらいの代物である。
しかし今は昼前のまどろみの時間。しかも朝にあんなことがあっては性欲も衰えてしまう。
「ああ、やらしいの見てるなぁ。全く朝からそんなの……」
「見たい気分なんだよ」
「イヤなことを忘れたいから?」
「うるさいなぁ、あっちいってくれよ!!」
俺は怒鳴り散らした。まさに図星の事を言われてしまったためだ。
不幸中の幸いか、店には俺だけだったのでよかったが……。
これじゃ何のためここに来たのかわからない。朝と同じことしているんじゃ……俺もまだまだ子供なのかもしれない。
それからしばらくして、アルバイト店員の女性が笑顔で俺によってくる。
「ねぇ、せっかく来たんだから…なんか買って行ってよね」
「……うん」
「あれ? 今回はやけに素直じゃんよ。普段だったら癇癪(かんしゃく)起こしてるのに」
「じゃ、これね」
男性用ファッション雑誌と菓子パン、牛乳をカウンターに置く。
そして会計を済ませ、俺は学校へと急いだ。
「ありがとうございました」
女子大生のスマイルも無視して学校へダッシュした。
太陽の光が眩しく、目を細めた。今行けば、昼前の3限目に間に合う。
そう、うちの高校はほかと違って午前3限、午後3限なのだ。だから、3限目に間に合うというだけで、昼休みが謳歌できて少しお得なのだ。
俺は校門をくぐり、我が校名物『こぶし並木』を走り抜ける。
こぶし並木というのは、校章であるこぶしの花を讃えて(たたえて)校門から校舎までの間に植えられているのだ。
3限目が体育なのか、外のロータリーへ隣のクラスの奴らが集まってストレッチをしている。
「おっす! 体育がんばれよ」
知り合いと軽い挨拶を済ませ、下駄箱へと急いだ。
「やばいな、チャイムまで二十秒を切ったぞ」
なんで二年が四階で三年が一階なんだよ。絶対不公平だよな。これじゃ二年は遅刻して下さいって言ってるもんだぜ。
心の中でぼやいたが、チャイムは待ってくれないので、教室まで全力疾走した。
途中何人かの女子生徒にぶつかったが、軽く謝る程度でそのままダッシュする。これで女子の俺に対する評価は少し下がっただろうな。
キンコーン、カンコーン…
ガラガラガラ……「セーーーーーーーフ!」俺は教室中に響くくらい叫んだ。
「アウトだ! 黒柳(俺の名字だぞ…)」
そこには出席簿を怒りのためにプルプルさせている国語教師が居た。
「へ?」
教室中が含み笑いをしていた。
なんで? 教室を間違えたと思ったがそうでもないらしい。確かに窓際には俺の席があるし、間違いない。じゃ、俺の格好が……。いやちゃんと指定の制服を着こなしている。じゃあ、…。
「大体な、黒柳。登校時間はとっくに過ぎてるのにセーフもフェアもない。遅刻に決まってるだろうが! わかったなら早く座れ」
「……はい」
そうか、確かにそうだ。じゃ、座れと言うことだから…。
「なにをしてる?」
「え? 座れっていったから……」
「床に座れっていったんじゃない、席に座れっていったんだ」
教室中がドッと沸き上がる。
「……はい」
俺はしかたなく、自分の席へと向かう。
その間にも周りの奴らからのヤジが俺にバンバンととんだ。
「いいねえ、天然記念物だ。ワシントン条約で保護しなきゃなぁ」
「あの教師を笑わせたのはお前が最初で最後だ」
いろいろと言われ、クラスの笑いをすべて俺が奪ったに思えたが……。
彩乃だけは違っていた。
クラスの輪に入ってないっていうか、浮いているというか。他の奴らが笑っているのに対して、彩乃は笑いもしないで無表情のまま、窓の向こうを眺めていた。
俺にはそんな彩乃が一際目立って視界に入ってきた。
普段の彩乃からは考えられないくらい感情が消えている。
やっぱりな、彩乃の奴。
でも俺が悪いけど、彩乃になんて謝れば良いんだよ。
ダメだな。昔からそんな経験がなかった俺が謝るなんて絶対に無理だ。
ま、時間をかけてゆっくりと仲を修復していけばいい、それが最良だろう。
それから3限目は彩乃をたまに見たが、表情は変わらず窓の向こうを眺めているだけだった。
「ねぇ、黒柳、織田さんとなんかあったの?」
「別に……まあ、ああいうナイーブになりたいときって誰でもあるだろ」
「そうかぁ? 朝からずっとあんな感じなんだよ」
俺は昼休み、親友の松岡秀明と向かい合わせに昼飯を食っていた。
松岡のフォーク型スプーンが弁当箱を縦横無尽に動き回る。よっぽど腹が減っているようだ。
「やっぱりへんだよ。黒柳からもなんとか言ってくれないかな」
「イヤだよ俺は。ああいうのはほっとくのが一番だっていうの保健体育で習っただろ」
俺は生温い牛乳を喉に流し込みながら言った。
「そうだけどぉ。……やっぱ織田さんてさ、うちらのクラスのムードメーカーでしょ? だからさ、織田さんが暗いとクラスが明るくならないんだよね」
「だったらピンチヒッターで他の奴が変われば良いじゃないか。俺は喜んで代役を引き受けるぞ」
「それはそうかもしれないけど。黒柳は男子には人気あるけど女子には人気無いからなぁ」
「どういうことだよ、それ」
俺はその言葉にかちんときて、空になった牛乳パックを握りつぶした。
「僕らには織田さんが必要なんだ」
「話を逸らすなよ。俺が女子に嫌われているって?」
俺は松岡を睨み付ける。
「え? ははは、その話は忘れてよぅ」
「イヤだ。ここじゃ無理なら表へ出ようぜ」
松岡が返事をする前に俺は席を立ち、松岡を無理矢理に表へ引きずりだした。
「ここならいいだろ? で、何で女子に嫌われてるんだよ」
運動部部室裏の校舎陰。学校の死角中の死角で有名な場所である。
「怒るなよ。いま、黒柳のへんな噂がいろいろと出回っているんだ」
「うわさ?」
「黒柳はヲタクで、部屋に等身大のポスターが貼ってあるとか……」
その後、噂の話は絶えること無かった。内容の一部をあげてみると。
黒柳は彩乃とできてて、妊娠させ中絶(おろ)させた。彩乃ちゃんの卑猥な写真でおどしてやらせてもらっているとか。三人以上の女と、肉体関係があってそれをみられて……。
女子トイレを盗撮して裏の世界に売りさばいてるとか。同い年くらいの女の子を監禁して、調教して……○○☆□◇●△♪♂♀(申し訳ありません。自主規制させていただきました)
「なんだよそれ……」
俺は怒りを通り越して驚愕に変わっていた。
しかも噂のどれをとっても、織田彩乃がらみの陰湿なものだった。
「デマにもほどがある」
「でもそれで教室中、話題が絶えないんだ……」
噂の内容が彩乃がらみの理由(わけ)は何となく解る気がする。
俺と彩乃は夫婦みたいに仲がよかったのに、今日になってから口もきいていない。
そんなところから女子の間でいろいろな噂が発生したのだろう。
自分でも薄々気付いていた。
「本当のところはどうなの、それで織田さんとは」
「別に、なんでもない」
「うそ。僕には解るよ、親友だし」
松岡の澄んだ目が俺の顔を黙視している。松岡に黙視されると、嘘を見抜かれる気がしてならない。
だから、俺はいつも松岡だけに隠し事はしていない。
「ふぅ、松岡には参るよ。……じゃ、本当のことを言う。まずちょっと座るか」
二人肩を並べてしゃがみ込んだ。
「実は、……喧嘩したんだ」
「やっぱりなぁ………で?」
俺は事細かく松岡に話しかけた。今朝あったことを忠実につたえた。
「ま、こんなもんか……」
松岡は俺に助言してくれるとばっかりおもっていた。それが、
「よかったぁ。…で、正直言って黒柳は好きなの? 織田さんのこと」
「………。どうだろうな、幼なじみだし。べつに、想ってない」
松岡は胸をなで下ろし、安心しきったようにこう呟いた。
「ふ〜ん、よかったぁ。実はさ、……」
「なに改まってるんだよ」
「黒柳にいうのもなんだけど……僕、織田さんが好きなんだ」
「はぁ?」
俺は思いっきり腰が抜けた。なにを言い出すのかと思ったら…。
「でも僕には告白する経験も、度胸もないし。織田さんのことあんまり知らないんだ」
「はぁ?」
また腰が抜けた。あまりにも現実離れしすぎて、目が点になってしまう。
「だから黒柳は昔からの幼なじみだから。織田さんのこと教えてほしいなって」
「知らないのに好きになったのか?」
「うん! 一目惚れ」
俺は松岡のこんな堂々とした態度を見たのは初めてだった。
いつも松岡はもじもじして言いたいことも言えず、優柔不断で影が薄いと思っていた。
それが今、好きな人が出来て一回り大きくなった松岡が俺の隣にいたのだ。
「だったら、知らないまま告白すればいいんじゃないか?」
「どうして?」
「そうすりゃあ、彩乃のことが解るにつれてもっと好きになれるじゃないか」
「そうか、そうだね」
「でもな、相手の厭(いや)な面(短所)も同時にわかると思うんだ。それからだな、松岡の努力次第なのは……」
俺もいつになく真剣に語ってしまった。今回は松岡の熱意に押された形だった。
しかも会話が進めば進むほど、心が痛むは気のせいだろうか。
「じゃあ僕、明後日の放課後に告白するね。学校裏の森林緑道のベンチで……。黒柳も応援してよ、ダメもとでアタックしてみるから」
「ああ……」
【つづく】
【あとがき】
ひっぱるねぇ。疲れたね、憑かれた(え?)
こんなの徹夜で書いちゃったから、もう体ボロボロ。
現在、午前六時二八分。しかもビールまで飲んでるから、力が入らない。
眠いし。
誤字脱字があったらゴメンね、あとで修正します。
無理に後半まとめちゃったけど、これからいろいろ修正するから。
それにプロローグと内容が相当違うけど勘弁ね。この話は多分、チェキッ娘のドラマの影響だと思う。いいね、チェキッ娘。ラヴラヴって感じ!
う〜ん、酔っぱらってるな。(というか、話古すぎ)
あと言いたいことは、次章などに書かれると思うのでそちらを参照して下さい。
そんじゃ、バイバイ。